ロータリーの活動指針

決議23-24の解釈

ロータリーの世界においては、”Community Service”とは、一人一人のロータリアンが家庭人として、職業人としておよび社会人として、サーヴィスの理念を実践に移そうとすることを言う。
このサーヴィスの理念の実践を目的として、多くのクラブは、サーヴィスの実践の契機を自覚させるため、クラブ会員の行う様々なサーヴィスの実践活動を実施してきた。ロータリアンとロータリークラブの指針となり、また、ロータリーとサーヴィス活動のあるべき姿を明らかにするために、以下の原理を認識し、実施することを適当と考える。

第1条.

本来、ロータリーとは、自己のために益しようとする願望と他人にサーヴィスしなくてはならないとする義務意識との間に絶えず生じる葛藤を調和しようとする人生哲学のことである。この哲学こそ”Service Above Self”であり、”He Profits Most Who Serves Best.”という実践倫理原則をその根底に置くものである。

第2条.

一言で言えば、ロータリークラブとはロータリーのサーヴィスの哲学を信奉する代表的職業人のグループのことである。したがって、この代表的職業人が絶えず追求しなければならないものは ① クラブ生活を通して、事業と人生の成功の達成と幸福の実現の真の拠りどころであるサーヴィスの理論を学び ② クラブ生活を通して、クラブ会員だけではなく、地域社会全体に対してサーヴィスの理論の提唱を行い ③ 一人一人のロータリアンがあくまで一個人として、自己の職業的社会生活だけでなく日常生活一般において、ロータリーのサーヴィスの理論を実践に移し、かつ、 ④ 具体的原則と事例をとらえ、個人的サーヴィスの方法により、また団体的サーヴィスの方法より単にロータリアンの教育のためばかりではなく、すべての一般社会人にロータリー理論の実践の尊さを理解してもらうことである。

第3条.

国際ロータリーは次の目的達成のために存在する組織のことを言う、すなわち、

  1. ロータリーのサーヴィスの理念を守り、これを発展させ、世界中に広めること
  2. ロータリークラブを設立し、これに指導と助言を与え、その管理に対して監督を行うこと
  3. ロータリークラブの直面する諸問題を研究し、クラブに対する強制命令の方法ではなく、良き助言の方法により、ロータリークラブが作り出した慣行とサーヴィスの実践活動−多数のクラブによって、実践に値するものとしてすでに広く行われ、国際ロータリー定款に記載されている”Object of Rotary”の精神に逸脱していないような奉仕の実践活動−を集約・類型化を行う情報媒体機関としての機能を果たすこと

第4条.

サーヴィスの精神世界に生きようとする者は行動を起こさなくてはならない。ロータリーは、単に心の状態に留まるものであってはならない。ロータリーの哲学は、単に主観的心の状態に留まらず、客観的行動に移さなくてはならない。したがって、ロータリアンとロータリークラブはサーヴィスの理論を実践に移さなくてはならない。また、ロータリークラブが団体行動を起こすにあったては、本決議に定める準則にそって行うことが望ましい。各ロータリークラブは、毎会計年度において、地域社会内で行われている主要なサーヴィスの実践活動に資金援助を行い、そのサーヴィスの実践活動をできる限り、毎年変えるようにし、会計年度終了以前に完了することが大切である。この種のサーヴィスの実践活動は真の社会の必要性に応じて行わなければならないと同時に、クラブ会員の団結と協力を必要とする。この種のサーヴィスの実践活動に先立ってロータリークラブはその会員に対して、そのクラブの事業計画として、地域社会内部における個人的サーヴィスの励行をたえず提唱するという事業をかかえており、その上にこれを実施しなければならないことを絶えず念頭においておかなければならないのである。

第5条.

各ロータリークラブは、サーヴィスの実践活動の中、どの事業が自己のクラブの事業計画として適切であるか、またどの事業が自己の所在する地域社会に適合するかを選択するに当たって、絶対的自治権を有する。しかし、いかなるクラブも、ロータリーの目的にそぐわず、またはロータリークラブ存立の第一義を危機にするようなサーヴィスの実践を容認してはならない。また国際ロータリーは各クラブのサーヴィスの実践活動の中、どれがどのクラブでも行える性質のものか研究し、その実施の要綱を明らかにし、これを促進させ、かつまた、これらのサーヴィスの実践活動に有益な助言を与えることはできても、いかなるロータリークラブのサーヴィスの実践活動に対して、積極的にも、消極的にも、命令する権限を持ってはならない。

第6条.

個々のロータリークラブがサーヴィスの実践活動を選択するに当たって、規則を定めることは適切ではないが、大まかな指針として、次に定める原理に即せば大過なくこれを行うことができる。

  1. ロータリーの限定会員制からして、地域社会に、その社会全体のために意見を発表したり、活動を行う立場にある公共的・またはこれに準ずる組織が地域に存在しないことを確認した後、初めて、ロータリークラブは、地域社会の住民全体の支持が得られなくては成功を期待できないような、地域社会に効果を及ぼすことを目的とするサーヴィスの実践活動を企画立案、実施しなければならない。また、商工会議所が存在する場合、ロータリークラブは商工会議所の機能を侵害したり、その機能を肩代わりしてはならない。ロータリークラブとしてではなく、ロータリアンとしてサーヴィスの原理の専門家の立場で、商工会議所に加入して積極的活動を行い、また地域社会の住民として全ての住民と心を一つにして、地域社会一般に及ぼすサーヴィスの実践活動に関心を持ち、分に応じて、金銭の拠出と労務の提供を行わなければならない。
  2. 一般論として、ロータリークラブがクラブとしてのサーヴィスの計画−いかに有益なものであっても−企画立案実施するに当たっては、この計画の完全実施と目的達成に対して、責任の全部または一部を負担する充分な資力と意欲とがある場合のみ、これを行うことができる。
  3. ロータリークラブがサーヴィスの実践活動を選択する場合、広報宣伝を主要目的としてはならないけれども、ロータリーの影響を強める一手段として、優れたクラブの事業計画が見事に成功した場合、妥当な広報宣伝を行わなければならない。
  4. ロータリークラブは事業計画の重複を避けなければならない。したがって、一般論として、すでに他の団体が実施し、立派な成果をあげているような活動を企画立案実施しなくてはならない。
  5. ロータリークラブはその活動を行う時、できる限り、既存の団体を支援しなくてはならない。しかし、その既存団体の設備・能力が目的達成のために不十分である時、必要とあれば、新しい団体を設立することができる。ロータリークラブにとっては、新たな重複する団体を設置することより、既存の団体を改善するほうがよいのである。
  6. ロータリークラブのすべての活動において、その最善かつ最高の行動は、世の警鐘者たる活動である。ロータリークラブは社会のニーズを発見しても、それに対して地域社会全体が責任を負うべきものである場合、ロータリークラブだけで、このニーズを救済しようとしてはならない。地域社会の人が、救済の必要性を自覚できるように努力し、地域社会に対して、負うべき責任感を喚起する。この責任はロータリークラブだけでなく地域社会全体が負うべきものである。また、ロータリークラブがこの事業の創始者となり、その遂行に指導性を発揮する場合でもロータリークラブは、この事業に関わる全ての団体の協力を得られるように努力しなくてはならない。そして、他の協力した団体に、その功績を譲るようにしなくてはならない。このことは、客観的にみてもロータリークラブの功績であり、他の団体に譲ることによりロータリークラブの功績が薄れようとも実行しなくてはならない。
  7. ロータリークラブのサーヴィスの実践活動は、ロータリークラブ会員にサーヴィスの世界における訓練を行うことを目的として企画された教室の実験例に過ぎない。ロータリアンの個人的サーヴィスの努力を逐一記録するクラブ活動のほうが、一般的に言えば、クラブの団体行動のみを要求するクラブ活動よりも、ロータリー精神にそうものである。

Source: RI Convention Proceedings 23-34 ; 26-6 ; 36-15 ; 51-9 ; 66-49